| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-08 (Oral presentation)

トランスクリプトーム解析で迫るエゾサンショウウオの表現型可塑性の分子機構

*松波雅俊(北大・地球環境), 岸田治(北大・FSC), 北野潤(遺伝研・生態遺伝), 道前洋史(北里大・薬), 三浦徹(北大・地球環境), 西村欣也(北大・水産)

同一のゲノム情報をもつにも関わらず、環境の変化に応じて形質が変化する現象は表現型可塑性と呼ばれ、個体群の動態に大きな影響を及ぼす。北海道に生息するエゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の幼生は、環境に応じてさまざまな表現型可塑性を示す。被食者であるオタマジャクシ存在下では頭部が巨大化し、捕食者であるヤゴの存在下では外鰓・尾高が発達する。

本研究では、この表現型可塑性の分子機構を解明するために、トランスクリプトーム解析をおこなった。道内でサンプリングした卵を捕食者存在下・被食者存在下・それぞれのコントロールの4つの条件で飼育し、形態変化を誘導した。誘導開始から0時間後・12時間後・7日後の個体の脳・頭部・鰓・尾からRNAを抽出し、解読した。解読結果をアセンブルすることで、遺伝子の配列を復元した。このなかから各処理・コントロール間で有意に発現量が変化している遺伝子を同定するために、それぞれの処理での遺伝子の発現量を推定し、GLM法による組織ごとの多重比較と各処理とコントロール間で二群間比較をおこない、発現変動遺伝子を同定した。それらにはコラーゲンやケラチンなどの形態形成に関与する遺伝子が含まれていた。また、ホルモン関連遺伝子の比較から、攻撃型ではプロラクチン、防御型では副腎皮質刺激ホルモンの前駆体であるPOMCの発現の上昇が観察された。


日本生態学会