| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-004 (Poster presentation)

火入れ地での草刈りによる草原性植物の開花状況の変化

*井上雅仁(三瓶自然館),高橋佳孝,堤道生(近中四農研センター)

島根県の三瓶山西の原では,ススキ草原を維持するために火入れが行われており,レクリエーションなどの場として利用されるとともに,草原性の希少な動植物の生息生育場所にもなっている.一般に,火入れはススキ草原の維持に効果的であるが,生物多様性の保全という観点からみれば,それだけでは十分ではない場合も多く,採草や放牧といった他の管理との組み合わせが重要であるといわれている.また,西の原のススキ草原は散策の場として利用されているため,散策道周辺で草原性植物の開花を促すための方策が求められている.そこで,当地のススキ草原内で刈り取り管理を付加し,草原性植物の開花数の変化を調査することで,草刈りによる開花促進の効果について検証した.

2012年春に,散策道に沿って長さ24m,幅3mの調査区を3箇所設置した.そのうち,半分にあたる長さ12mの範囲について,同年の夏季に草刈りを行い,翌年も夏季の刈り取りを継続した(草刈り区).残りの半分は火入れのみの管理とした(対照区).それぞれの区に1m四方の方形区を1m間隔に5個ずつ設置した.植生の状況として,処理後1年目と2年目の秋季に出現種,各種の草丈と被度を,開花状況として,処理後の5月,7月,9月に開花茎数を記録した.

植生の状況は,火入れのみの対照区では,ススキが著しく優占し,植生高は1mを越えていた.一方対照区では,優占種はススキであるものの,植生高は0.5mを下回る状態に抑えられた.開花茎数は,草刈り区では,対照区に比べるとカワラナデシコ,シラヤマギク,ウメバチソウなど,秋咲きの草原性植物で多い傾向がみられた.


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