| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-010 (Poster presentation)

熱帯雨林に混生する球果類の個体群動態:キナバル山での標高・地質による変異

*澤田佳美,相場慎一郎(鹿児島大院・理工),北山兼弘(京大院・農)

常緑広葉樹が圧倒的に優占する熱帯でも、高標高や貧栄養といった立地条件では球果類(いわゆる「針葉樹」)が多く混生する。球果類はどのようにして常緑広葉樹と共存しているのだろうか?本研究では、キナバル山の標高1700・2700・3100mのそれぞれ堆積岩・蛇紋岩・第四紀堆積物(1700mのみ)上に設置された計7つの調査区において、球果類(すべてマキ科またはナンヨウスギ科)の1997~2013年の個体群動態を分析した。土壌栄養塩濃度は、第四紀堆積物>堆積岩>蛇紋岩の順に低下する。

球果類の幹数密度は、フトモモ科のLeptospermumが優占する標高3100mの蛇紋岩を例外として、高標高・貧栄養立地ほど高く、標高1700mの第四紀堆積物上では2個体のみだった。球果類の直径階分布は、蛇紋岩ではどの標高でも逆J字型、堆積岩地では一山もしくは二山型を示した。球果類の成長速度は、直径10cm未満の個体では、明条件では全調査区で広葉樹と同等以上だったのに対し、暗条件では蛇紋岩地(標高3100mを除く)でのみ広葉樹を上回った。各調査区での球果類の分布は、高木層や光条件が良好な低木~亜高木層に偏っていた。また、高標高や貧栄養立地では、林冠がまばらで低木層の光条件がよいと推察された。

以上のことから、球果類の個体群動態は地質間で異なり、堆積岩地ではギャップ形成などの撹乱に依存した更新が、蛇紋岩地では連続的な更新が行われることが示され、これは面積当たりの個体群回転速度の傾向ともほぼ一致する。この傾向は広葉樹との小径木での成長競争に起因するものと考えられる。また、同地質上でも高標高で球果類の個体数密度が高くなるのは、光条件の改善が一つの要因となっていると考えられる。


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