| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-025 (Poster presentation)

ノンランダムなギャップ形成過程:航空写真による急傾斜山地に成立した暖温帯針広混交林における林冠動態解析

*酒井武(森林総研), 米康充(島根大),小熊宏之(国環研),日浦勉(北大・苫小牧研究林)

成熟した森林は自然撹乱によるギャップ形成と再生を繰り返す時空間的に不均質な存在と考えられ、森林群集を構成する樹木の共存は、様々な立地環境で各構成種の更新が異なることによって成り立っていると考えられている。長いライフスパンを持つ樹木の集団である森林は稀で大きなイベントを契機として更新し、その影響が長期間に及んでいることが明らかにされてきた。森林動態を詳細に明らかにするには広域長期の林冠動態などを把握するため数十haの集水域スケールの解析も必要である。本研究では、暖温帯針広混交林において空中写真から約40haの集水域全域の40年間の林冠動態を解析し、1)ギャップ形成過程と立地環境要因との関係を明らかすること、2)針葉樹の分布と立地環境及びギャップ形成との関係から混交林の動態と共存に地形がどのように影響を与えているかを明らかにすることを目的とした。解析の結果、ギャップ形成の要因は、高い林冠を形成していた場所、既存ギャップの隣接地で発生するという構造的な要素と急傾斜地でギャップ発生が多いという地形依存性が認められた。また、針葉樹は傾斜が緩く比較的乾燥する尾根付近で大きく発達した林分を形成しており、針葉樹によって生じるギャップ面積はより大きくなる傾向がみられた。針葉樹によるギャップ形成の傾向は針葉樹の同所的更新が起こらないと混交林は維持されないことを示すが、そこでの針葉樹稚樹の更新はほとんど見られなかったため、この解析時空間スケールではこの森林群集は非平衡状態にあると考えられた。


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