| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-041 (Poster presentation)

多年生キケマン属植物における種内変異に関する研究

*山岸洋貴(弘前大学・白神), 藤原久司(株ズコーシャ), 本多和茂(弘前大学・農生)

ケシ科キケマン属植物は北半球を中心に200種以上が生育し、日本では約16種が分布している。このキケマン属植物のうち複数の種で葉形態などに多様な個体変異が存在することが報告されているが、詳細は明らかではなく、その生態学的意義や進化的背景は不明である。そこでこれまで北海道を中心に分布するキケマン属の1種エゾエンゴサク(Corydalis fumariifolia subsp. azurea)と、本州北部に生育しエゾエンゴサクと極めて近縁であるオトメエンゴサク(C. fukuharae)を対象に、個体変異の実態を明らかにするため、葉や花器形態の計測からその変異パタンを、野外調査から集団内の個体変異の出現率を求めた。さらに葉緑体DNAの非コード領域を利用した集団間の系統解析を行い、変異個体の出現率が異なる集団間の遺伝的関係について考察した。本研究では、新たにロシア沿海地方に分布するC. fumariifoliaの亜種 (subsp. fumariifolia)も研究対象に加え、これまでと同様にその変異パタンなどを明らかにした。またその他多様な個体変異が観察された日本およびロシア沿海地方産のキケマン属植物ヤマエンゴサク、ミチノクエンゴサク、C. remotaなども含め、これらの系統関係を明らかにするため、新たにITS、MatK、rbcL領域を利用した系統解析を行った。結果、ロシア沿海州産のsubsp. fumariifoliaにも集団内に多様な個体変異が存在する事が明らかになった。また、これまでの種間の系統解析から多様な個体変異が生じる種はすべて塊茎をもつ春植物であり、これらは系統的に近縁であることが示唆された。


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