| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-053 (Poster presentation)

Imaging-PAMを用いた半島マレーシア熱帯雨林における不均一な気孔閉鎖の時空間変動

*鎌倉真依,小杉緑子(京大・農),高梨聡,上村章,宇都木玄(森林総研),Abdul Rahman Kassim (FRIM)

熱帯雨林は様々なサイズの樹木から構成されており、そのバイオマスとH2O/CO2交換量の大きさから森林生態系の機能的役割を明らかにする上で重要である。個葉光合成能は、一般に樹高とともに増加し、葉の形態や生化学的特性を生育光環境に適応させている。

半島マレーシアPasoh森林保護区(熱帯常緑林)の林冠を構成する異圧葉樹種では、強光下で、不均一な気孔閉鎖とともに光合成日中低下が起こり、それが群落スケールのCO2交換量にも影響を与える可能性が指摘されている。そこで本研究では、林床から林冠(0.6-31 m)に分布する5樹種を対象として、Walz社のImaging-PAM(二次元クロロフィル蛍光画像測定装置)を用いて、不均一な気孔開閉がどのような時空間スケールで生じているのかを明らかにすることを目的とした。クロロフィル蛍光画像の日変化測定と同時に、個葉ガス交換速度の実測およびシミュレーション、加圧浸潤法による気孔開度分布測定、葉の形態学的観測を行った。なお測定は2013年1月および2014年1月に行った。

二次元クロロフィル蛍光画像から算出した葉内光合成電子伝達速度の分布および個葉ガス交換速度のシミュレーション結果から、林冠を構成する異圧葉樹種Neobalanocarpus heimiiでは、強光下で、葉温および飽差の高い時間帯に不均一な気孔閉鎖とともに光合成日中低下が見られた。一方、葉温・飽差が相対的に低い森林中層から林床の樹木では、終日均一な気孔開閉が起こっていた。以上の結果から、林冠構成樹種は周囲の微気象環境の変化に応じて気孔開閉様式を変化させることにより、葉の光合成能と水分状態を維持していることが示唆された。


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