| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-060 (Poster presentation)

アクアポリンが光合成の環境応答に与える影響

*半場祐子/京都工繊大・応用生物,北条謙弥/京都工繊大・応用生物,河瀬美姫/京都工繊大・応用生物,児玉直美/農環研・大気環境,河津哲/王子製紙・森林研,前島正義/名古屋大・生命農学,且原真木/岡山大・資源植物研

植物において水輸送を担う膜輸送体であるアクアポリンの中には、CO2透過性をもち光合成機能に影響するものがある。このようなアクアポリンは、葉内のCO2拡散の促進や気孔制御を通じて光合成の環境応答に重要な役割を果たしている可能性がある。アイスプラントのアクアポリンMcMIPBおよびダイコンのアクアポリンRsPIP2を過剰発現させた形質転換タバコおよびユーカリについて、大気と土壌の乾燥ストレスに対する応答を調べた。まずストレスがない状態(VPD 1kPa以下、十分な潅水後)で光合成速度、気孔よび葉肉コンダクタンスを測定したところ、McMIPB およびRsPIP2が高蓄積したタバコおよびユーカリ系統でいずれも高い値を示した。次に2.0kPa以上の高VPDで測定したところ、形質転換タバコおよびユーカリ系統で気孔コンダクタンスはより大幅に減少した。ただし光合成速度は非形質転換体よりも高かった。ユーカリでは高VPDによって葉肉コンダクタンスは減少したが、形質転換体の方が減少率は小さかった。次に潅水停止により土壌の乾燥ストレスを与えた結果、形質転換タバコおよび形質転換ユーカリいずれについても、気孔コンダクタンスおよび光合成速度の減少が大幅に抑制された。以上の結果から、(1)McMIPBおよびRsPIP2は葉肉および気孔におけるCO2拡散を促進し、光合成速度を増加させること、(2)McMIPBおよびRsPIP2は大気乾燥に対する気孔の高い感受性と土壌乾燥に対する気孔の低い感受性に関係していること、が示された。アクアポリンは葉肉および気孔の調節に関与しており、大気および土壌乾燥ストレス下における高い光合成速度維持に寄与している可能性が示唆された。


日本生態学会