| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-068 (Poster presentation)

連続分光反射率を用いた葉形質の季節変化の評価

*中路達郎(北大・北方生物圏FSC),小熊宏之(国環研),日浦勉(北大・北方生物圏FSC)

葉の分光反射を観測する分光リモートセンシングは、構造や化学成分といった形質の非破壊評価に期待される技術である。近年、可視から近赤外波長、あるいは短波長赤外波長までの連続した数百バンドの多波長反射情報を測定・解析することで、複数の葉形質を同時に推定し、その多様性や環境応答を評価しようとする試みが進められている。全球の熱帯林を扱った事例ではNや水分、有機成分等の推定に可視~短波長赤外波長の反射率が有効であることが示されている。しかしその一方で、温帯や冷温帯における落葉性の植生ではまだ評価法の検証例は少なく、形質の季節性がどこまで把握できるかについてもほとんど研究されていない。そこで本研究では、冷温帯の落葉性広葉樹林を対象に、季節ごとに葉の形質と分光反射率のデータを採取し、分光リモートセンシングの可能性を探った。北大苫小牧研究林内の12種の落葉樹を対象に、若葉、成熟葉、黄葉の可視~短波長赤外波長の連続分光反射率を計測し、反射率やバンド総当たりの正規化差分植生指数を説明変数にして、形質(LMA、C、N、フェノール、リグニン、セルロース)の推定モデルの精度を試験した。さらに、林冠上に設置した分光カメラによる反射率画像にモデルを展開し、樹種や季節変化の再現が可能かどうかを考察した。反射率データを使用した際のPLS回帰モデルでは、その推定誤差(値レンジに対するRMSECV)は8~16%の範囲であり、老化葉でも成熟葉を用いた場合と大きな相違はなく精度は安定していた。また、林冠の画像データに展開することで、ミズナラの樹冠におけるフェノールの季節変化パターンなども再現された。これらの結果は経験モデルに基づくものの、落葉樹林においても形質のセンシングが可能であることを示唆している(本研究の一部は環境研究総合推進費戦略的研究開発領域S-9の支援を受けた)。


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