| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-085 (Poster presentation)

シロイヌナズナジェノタイプの表現型と生息地環境の関係

*尾崎洋史,小口理一,彦坂幸毅(東北大・生命科学)

植物の形質は生息地の環境と密接な関係があると考えられている。つまり、生息地の環境条件に適していない表現型をもつ植物は排除され、特定の範囲内の表現型をもつ植物のみが生存でき、環境とその対象となる形質の間には相関があることが期待される。これまでに、環境と形質の関係について様々な研究が野外で行われてきたが、野外で取得できるデータには限りがあり、その理解は十分ではない。我々は、世界各地に生息するシロイヌナズナのジェノタイプについて人工気象器内での成長解析とガス交換測定を既に行っている。形質と生息地環境の関係を知るために、各ジェノタイプの生息地環境(標高、気温、雲量、降水量、大気飽差、風速、純照射量、潜在蒸発散量、湿潤指数)を推定し、既に取得した形質と推定した生息地環境について解析した。

まず、生息地環境のパラメータで主成分分析を行った。第1、第2、第3主成分は、高い相関を示した環境パラメータから、それぞれ、湿度、温度、降水を意味すると考えらえる。これら3つ主成分の累積寄与率は88%となり、自生地環境の変動の大部分が説明された。また、この第1、第2、第3主成分は、それぞれ植物体の重量や窒素量、葉面積と関連する形質、成長や光合成関連の形質と高い相関が検出された。次に、生息地環境と形質について単相関を総当たりで調べたところ、有意な相関を示す22の組合わせが見つかった。更に、一般化線形モデルによる相対成長速度や根重あたりの窒素吸収速度などを従属変数とした重回帰分析と赤池情報基準によるモデル選択によって、単相関では環境パラメータで説明されなかった形質でも、複数の環境パラメータを従属変数にすることでよく説明できる場合があった。以上のことから、生息地環境と形質には密接な関係があるといえるだろう。


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