| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-102 (Poster presentation)

ブナの優占状況が堅果の豊凶パターンに与える影響

小谷二郎(石川農林総研)

石川県内9箇所のブナ林で、1999年から2013年の堅果の結実特性を調査し、ブナ林内でのブナ優占度が豊凶パターンに与える影響を考察した。また、調査した集団の近隣の集団の分布状況が健全堅果率や受粉失敗率に与える影響を調査した。15年間の健全堅果率の推移をクラスター分析したところ、3つのタイプに分けられ、①結実がほぼ隔年でみられ豊作年の健全堅果率は50%を超える場合。②連続して結実がみられない年が含まれ、豊作年でのみ高い結実率を示す場合。そして、③一部連続して結実がみられない年が含まれ、豊作年での結実率がそれほど高くない場合、であった。そこで、林分でのブナ断面積優占度と健全堅果率の関係を調べたところ、調査期間中の平均値も最大値も断面積優占度との間で正の相関関係を示し、①は断面積優占度が高く健全堅果率が高い位置に、③は断面積優占度が低く健全堅果率が低い位置に、そして、②は①と③の中間に位置した。このことから、健全堅果率には単位面積当たりの開花数が多いことが受粉に有利に働くことが考えられた。しかしながら、平均受粉失敗率は断面積優占度との間では相関はみられず、一定距離内の集団数との間で負の相関関係がみられた。このことは、受粉失敗率には開花数よりも遺伝的多様性の高低が関係していることが示唆された。つまり、ブナの優占度や近隣での集団数によって、健全堅果率や受粉失敗率がある程度推定可能であることが示唆された。結果的に、ブナの優占率が低く近隣に少数の集団しか存在しない場合は、健全堅果率が低く受粉失敗率が高くなると推定された。


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