| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-164 (Poster presentation)

生態系サービス受益量の空間評価-利用・非利用価値の受益者としての地域住民の視点-

*庄山紀久子,山形与志樹(国環研)

生態系サービスの人間社会における受益量を評価するために支払意思額の推定など社会経済的な評価手法が適用されてきた。受益者の地理的分布によって生態系サービスの価値は異なり、地域住民とその他の遠隔地に住む市民では支払意思額が異なることがある。これは、地域住民は主に利用価値と非利用価値の受益者として、遠隔地の住民は非利用価値の受益者として考えられ、受け取る価値の種類が異なることに起因する。本研究では地域住民にとっての主観的価値を空間的に評価することを目的に調査分析を行った。

北海道釧路川流域に位置する鶴居村の全世帯を対象に郵送アンケート調査を実施した。この調査では具体的な保全金額ではなく、住民がどの生態系サービスを重視しているか相対的な価値を調べるため、あらかじめ保全金額を設定し、それを10項目の生態系サービスにどのように分配するか尋ねることで保全対策に対する選好性を尋ねた。その結果、平均的な分配金額は農業生産(供給サービス)、野生生物の生息地(基盤サービス)、環境教育(文化サービス)の順に高かった。さらに分配金額に影響する個人特性をTobitモデルによって分析した結果、保全シナリオの選好は回答者の属性によって異なり、(1)農家、古参の居住者は農林産物、水などの供給サービスを選好、(2)若齢、新参の居住者は観光や教育などの文化サービスや生物多様性保全を選好、(3)市街地以外の集落居住者や自然資源への依存度があるほど基盤・調整サービスを選好する傾向がみられた。また、生態系サービスの種類によって選好に空間的異質性が認められた。


日本生態学会