| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-170 (Poster presentation)

ALOS衛星データによる東シベリア北方林の湛水・枯死と地形・凍土変化の検出

*飯島慈裕(海洋研究開発機構),阿部このみ,伊勢紀,増澤直(地域環境計画)

永久凍土が広く分布する東シベリアでは、2004年冬以降、冬季の積雪と夏季の降水が大きく増加する湿潤的な気候が継続し、永久凍土表層の融解を伴い活動層内の土壌水分が大幅に増加した。この土壌湿潤化は、カラマツ(Larix cajanderi)を主要樹種とする北方林の生育環境を悪化させ、広域的に森林の荒廃が進行した。本研究では、ヤクーツク近郊のレナ川右岸・左岸での衛星データ解析に基づき、湿潤化による水域の拡大状況と、それによる永久凍土・活動層変化を伴う北方林変化域の進行過程を明らかにするため、湿潤化(湛水)した森林とその時系列変化の抽出を試みた。

2006~2009年の夏季のALOS- PALSAR画像を用いて、マイクロ波の後方散乱係数の閾値から水域の教師付分類を行い、複数年度の水域分布の変化を抽出した。また、同期間のALOS-AVNIR2画像から、草原と北方林の教師付分類を行い、同様に複数年度の北方林の変化を抽出した。

現地の集中観測地点周辺地域において、PALSARのマイクロ波後方散乱係数から、2007年時点の値と2009年と2007年との差分を組み合わせた閾値として段階的な区分をすることで、通常の森林と、過湿で林床面まで湛水した森林の違いを検出できる可能性が見出せた。また、PALSARとAVNIR2のそれぞれの土地被覆分類の比較から、湛水状態の継続による森林枯死と、森林火災域による違いも見出すことが出来た。

以上から、ALOS衛星データによる、北方林内の林床状態と森林変化を抽出する手法によって、湿潤化の初期の地表面状態を抽出し、その後の森林変化を追うことで、永久凍土、森林荒廃をもたらす一連の現象を経時的に捉えられる可能性が確認された。


日本生態学会