| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-023 (Poster presentation)

日本とニュージーランドの高山帯およびイスラエルとオーストラリアの花色構成の比較から読み解く、花色の平行進化

*久保田将裕,掛谷知世,辻本翔平(富大・理),工藤岳(北大・地球環境),石井博(富大・理)

動物媒植物の花の色は、花粉媒介者に対する重要なシグナルである。群集を構成する植物種の花色に関しては、これまでにChittka & Menzel (1992) がイスラエルの植物群集を対象に、Dyer et al. (2012) がオーストラリアの植物群集を対象に、多くの植物種の花が、膜翅目(ハチ)の色覚にとって識別しやすい色であることを示している。この結果は、Dyer et al. (2012) が主張するように、南北半球で花の色が膜翅目の色覚のもとで平行進化してきたことを意味しているのだろうか。

そこで本研究では、双翅目(ハエ・アブ)が主要な花粉媒介者である、日本とニュージーランド(NZ)の高山帯植物群集の花色(反射スペクトル)を調べ、先行研究と比較した。花の採取は、中部山岳国立公園立山とNZ南島の高山帯で行い、現地では訪花者の観察を行った。

その結果、日本とNZの高山帯の花は、膜翅目の色覚のもとで識別しやすい色が多いとは言えなかった。日本の高山帯の植物種を、膜翅目媒と双翅目媒に分けたところ、膜翅目媒の花色構成はChittka & Menzel (1992)及びDyer et al. (2012) の結果に近く、双翅目媒の花色構成は、ほぼすべての植物種が双翅目媒であったNZと似たパターンを示した。

日本とイスラエルの植物地理区はともに旧北区に属し、オーストラリア(オーストラリア区)とNZ(南極区)はともにゴンドワナ大陸に由来する植物種を多く含む。それにも関わらず、2つの先行研究の結果が似ていて、かつNZと日本の双翅目媒植物群集の花色構成が似ていたことは、花の色が全球的に平行進化してきたことを示唆している。


日本生態学会