| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-052 (Poster presentation)

ダイトウコノハズクにおける給餌内容と雛間の体サイズ格差の関係

*岩崎哲也,中岡香奈,中西啄実,高木昌興(大阪市大・院理・動物機能)

ダイトウコノハズクOtus elegans interpositusは出生地分散の様式に性差がある。特に雄は、できるだけ早く分散開始することがなわばりの獲得につながり、翌年の繁殖成功に有利であると考えられる。分散開始タイミングの違いには、親の繁殖開始時期や巣内の孵化順番が影響することがわかっているが、育雛期に親から受ける繁殖投資の影響は明らかになっていない。ダイトウコノハズクの繁殖開始時期には約1ヶ月の個体差があり、分散開始も同程度のばらつきがあると予想される。そのため繁殖開始の早晩によって親鳥の育雛様式が異なる可能性がある。本研究では、親鳥による育雛投資の主要素である給餌内容に着目し、まず繁殖開始時期と孵化順ごとのヒナの成長様式と給餌内容の関係を明らかにすることを目的とした。

2012~2013年の繁殖期に、孵化ヒナ数が3羽の巣箱で給餌内容を録画し、5日間隔でヒナを計測した。繁殖期前半と後半の営巣個体間で、給餌内容や雛の成長様式に違いはなかった。3番目に孵化したヒナの体サイズは同腹ヒナよりも有意に小さく、孵化日のずれによる影響を受けていた。しかし孵化日を補正した成長速度は同腹ヒナと同程度であった。また、3番目のヒナは在巣日数が短かったことから、同腹のヒナよりも早い成長段階で巣立つと考えられた。各雛への給餌回数に差は見られなかったが、体サイズの小さい3番目のヒナが相対的に多くの餌を得ている可能性がある。以上の結果から、ダイトウコノハズクは、繁殖タイミングにかかわらず全てのヒナを十分に成長させて巣立たせる育雛様式を持つことがわかった。発表では、出生地分散に成功しやすいヒナの形質と関連して、本種の育雛様式の意義について議論する。


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