| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-073 (Poster presentation)

岩礁潮間帯性腹足類における初期発生様式と個体群サイズの時空間パターンとの関係

*佐原良祐(北大・環境),深谷肇一(統数研),岩崎藍子(北大・環境),仲岡雅裕(北海道大学厚岸臨海実験所),山本智子(鹿児島大学水産学部),相澤章仁(横国大・院・環境情報),奥田武弘(水研セ・国際水研),野田隆史(北大・地球環境)

海洋ベントスは浮遊幼生期を持つ種と持たない種に大別される。どちらも分類群や生息場所の別なく認められ、同所性近縁種においても普通に見られる。これまで浮遊幼生期を持たない種は浮遊幼生期を持つ種に比べ集中分布する傾向があることが指摘され、これは分散スケールの違いの直接的帰結であると解釈されている。一方、このような空間分布の違いの原因として、メタ個体群におけるレスキュー効果が重要であると考えることもできる。もし後者の仮説が正しいのであれば、浮遊幼生期を持たない種は空間的に集中分布するばかりではなく時間的にも集中分布することが予想されるが、検証例はない。そこで岩礁潮間帯性腹足類を対象に、幼生時の分散様式の違いが分布の空間的及び時間的パターンに及ぼす影響を密度-出現頻度関係と密度の平均値-分散関係を用いて検討した。

2004年~2010年に太平洋岸の6地域(道東、道南、三陸、房総、南紀、大隅)の各25岩礁で潮間帯性腹足類の個体数を調査し、種毎地域毎に局所平均密度、出現地点数と出現年数の平均値、岩礁毎の個体数の時間平均と分散、年毎の個体数の空間平均と分散を求めた。

密度-出現頻度関係と密度の平均値-分散関係を比較した結果、浮遊幼生期を持たない種に比べ、浮遊幼生期を持つ種は時間的にも空間的にも出現頻度が高く、局所個体群サイズの時空間変動は小さいことが明らかになった。これらの事実は、発生様式の違いがレスキュー効果の働き方の差異を通して腹足類の時空間分布に影響を及ぼした可能性を示している。


日本生態学会