| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-076 (Poster presentation)

大阪湾矢倉干潟におけるイシマキガイ個体群の生活史と空間分布

*宮島瞳, 和田恵次, 奈良女子大学大学院

転石性潮間帯に生息する無脊椎動物においては、転石の特性が彼らの生活上の役割を通して分布に影響を与えていると考えられる。転石の存在様式と個体の分布様式との関係を見た研究は、様々な無脊椎動物で知られている。しかし、転石の操作により分布への影響を見た例は少なく、また個体の移動性を転石の特徴と関連付けて調べられた例もない。アマオブネガイ科のイシマキガイにおいては様々な生態学的研究が行われてきたが、その主たる生活基盤となっている転石との関連に注目した研究はない。また、本種の分布を知る上で重要である生活期に伴う空間分布については、両側回遊性と関連付けた研究しか知られておらず、底質や高度からみた分布の時間的変動をみた例はない。本研究では、潮間帯の転石を主に利用するイシマキガイについて、(1)底質と高度からみた分布の時間的変化、(2)石量操作による生息量変化、(3)個体の移動特性と石サイズの関係、を検討した。

産卵行動は、4月から9月まで石上で見られ、そのピークは6月であった。配偶行動は、6・7月がピークと推定され、石の上、特に石の上側面が利用されていた。毎月の体サイズヒストグラムから、新規加入個体は8月から9月にかけて、成体の分布域の下方に出現し、成長するにつれて潮間帯上部まで分布域を広げることが明らかとなった。分布密度と環境条件との関連から、本種の生息量には、石の被度、浸水条件が影響していることが明らかになった。石量の操作実験から、生息個体数は石の量に応じて増減することが示された。個体の1日当たりの平均移動距離は春・夏・秋に比べて冬が短かった。定住性と石サイズの間には、秋に相関がみられたが、春・夏・冬ではみられなかった。


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