| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-113 (Poster presentation)

室内プレイバック実験による同所的に生息するセミ2種の鳴き行動反応パターンの比較

*遠藤暢, 大澤直哉(京大院農・森林生態)

クマゼミとアブラゼミは西日本で分布や発生時期が重なり、鳴き声の周波数成分の重なりが大きいが、主に鳴く時間帯が午前と午後にわかれている.この2種の時間的な鳴き分けに、音響的種間干渉が影響しているか否かを調べるために、オスの鳴き声に対する発音行動の違いに着目して、室内プレイバック実験を行った.実験は野外で捕獲したオス個体に対し、同種・他種の鳴き声をスピーカーからランダムに聞かせ、同種・他種の鳴き声が引き起こすオスの発音行動がどのように異なるのかを調べた.クマゼミは同種への発音行動が顕著で、アブラゼミは同種・他種のいずれの鳴き声にも反応し、2種の発音行動に違いが見られた.2種とも野外での発音時間帯に発音行動が多く、発音行動の有無に個体差があり、発音行動は日周性や個体の生理的状態の影響を強く受けていると考えられた.クマゼミに見られた同種への反応選択性は、野外で観察される午前中のクマゼミの合唱が、日周性だけなく自種の鳴き声にのみ反応する発音行動によって引き起こされている可能性を示唆している.また、アブラゼミが他種(クマゼミ)の鳴き声に反応する本研究結果と、野外でクマゼミがアブラゼミの発音時間帯である午後にほとんど鳴かないことを合わせて考えると、アブラゼミの他種(クマゼミ)の鳴き声の識別の選択圧が低い可能性が示唆される.これらの結果から、オスの発音行動による音響的種間干渉は、クマゼミよりアブラゼミにより強く生じる可能性があり、生物地理学的な共存の結果、2種の異なる発音行動が選択されてきたものと推測される.


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