| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-139 (Poster presentation)

福島潟および周辺水田におけるオオヒシクイの食性

向井喜果(新潟大学・自)

渡り鳥とは、一般的に、生活環にあわせて季節的に長距離を移動し、異なる生息地を利用する鳥類の総称である。繁殖地、中継地、および越冬地のいずれかでも生息環境の悪化が生じると、個体群の存続確率の低下に繋がる可能生があるため、生息環境ごとの保護・保全が強く求められる。

新潟県福島潟は、繁殖地、中継地、もしくは越冬地として、多くの渡り鳥に利用される県内最大の湿性環境であり、なかでも準絶滅危惧種に指定されているオオヒシクイにおいては、冬期に日本に訪れる総個体数の約70%が飛来する、国内最大の越冬地になっている。本種は、ねぐらとして福島潟内を、採餌場所として主に潟周辺の水田を利用する。しかし、最近になり、福島潟内では、氾濫時の貯水量を増やすための潟拡張工事が、潟周辺の水田では大型圃場整備が進められており、このような大規模な環境改変は本種の越冬地の劣化をもたらし、将来的に越冬数の減少を引き起こす可能性も懸念される。加えて、新潟県はエコファーマーの認証要件として秋耕起を求めており、イネの落ち穂や二番穂を餌にすると考えられているオオヒシクイやハクチョウ類にとって、冬期の農地管理の変更も採餌環境の劣化に繋がる可能性が生じている。越冬地保全において重要なことは、対象種の食性を十分に理解した上で、それらの餌が利用できる状態に生息環境を整備・管理していくことに他ならない。

そこで本研究では、有効な越冬地保全策の立案に向け、DNAバーコーディング法と安定同位体比分析により、越冬期におけるオオヒシクイの食性を解明することを目的とした。本講演では、現時点で特定されている餌品目とそれらの糞への寄与率を紹介し、それらの結果をもとに採餌環境を保証する農地管理について提案する。


日本生態学会