| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-180 (Poster presentation)

河川において支流のダム操作は主流の流況改変を増幅するか、軽減するか?-相模川宮ヶ瀬ダムの評価事例-

*梁 政寛(東工大・土木),吉村 千洋(東工大・土木),Pengzhe Sui(東工大・土木), Oliver Saavedra(東工大・土木)

多くの河川において、流況はダム放流操作や取水により改変されている。その影響は下流に伝播するが、支川の合流により、流況の重ね合わせが生じる。本川・支川において、異なる目的を持つダムが存在する場合、合流点以下ではそれぞれの改変流況の複合影響を評価する必要がある。本研究は相模川水系において、本川の相模ダムと支川の宮ヶ瀬ダム放流操作の流況改変度合、および合流点直下における複合影響の評価を目的とした。

流況評価のために、水文過程の時空間分布を再現する流出モデルにより流量推定を行い、IHA(Indicators of Hydrologic Alteration)を用いて主要な指標を河川網上にマッピングした。対象期間を2004-09年とし、現在の改変流況および仮想的な自然流況の比較により、各指標における改変度合いを算定した。

本川での流況改変は、ほとんどの流況特性において見受けられた。主たる流況改変としては、夏季における70%近い流量減少、最低流量の85%減少、低水パルス頻度・期間の増加が顕著であった。一方、宮ヶ瀬ダムは灌漑用水の需要と洪水制御の目的から、支川における流量の季節性そのものを改変していた。興味深いことに、本川と支川の合流点以下ではそれらの複合影響から、月流量、最低流量、低水パルスの頻度・期間など一部の流況特性の改変度合いが小さくなることが示唆された。

ダムが本川・支川にある場合は、うまくその相互運用を図ることで、ダム下流の流況特性を選択的に自然状態に近づけられる可能性がある。また本研究で用いた流出モデルは、流量観測地点以外での流況推定、自然流況の再現やシナリオに基づく流況の評価が可能であり、河川生態系管理にも応用が期待される。


日本生態学会