| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-195 (Poster presentation)

水田生態系における異なる空間階層の植物種分布からみた群落の種多様性評価

*渡辺太一(信州大院・総合工),大窪久美子,大石善隆(信州大・農)

水田生態系の植物種多様性は景観から局所群落まで様々なスケールの空間階層から構成され,これらの種多様性を適正に評価するためには各階層間における種分布の相互関係を把握する必要がある。本研究では長野県上伊那地方の中山間農業地域を事例に,水田生態系における異なる空間階層における植物種分布を把握し,それらの相互関係から保全上重要となる群落の種多様性評価を試みた。

調査地区は立地環境として地形や土地利用,圃場整備状況の異なる12地区を選定し,各地区は土地利用状態を反映するよう500m直径の円形区(面積約20ha)で設定した。空間階層は次の3スケールを設定し,景観スケールは各地区の円形区,景観要素スケールは12タイプの土地利用区分,局所スケールは1㎡群落を単位とした。景観および景観要素スケールでは植物相調査(渡辺他,2013のデータを含む)を,局所スケールでは植生調査を2011~2013年の夏期に実施した。植生調査地点は各地区に設定した25m仮想メッシュの交点から選定し,事前調査において出現種数が多かった5タイプの景観要素(水田及び休耕地,畦畔,法面,道路)に成立する群落を対象とした。

局所スケールでは全1144プロットの植生資料が得られ,これらについてTWINSPANによる類型化とINSPANによる指標種抽出を行った結果,15タイプの群落が認識された。その中でもヒメシダやトダシバ等が指標種となる草原性植物群落2タイプ,ミゾソバやヒメクグ等が指標種となる湿性植物群落2タイプ,キカシグサやイトトリゲモ等が指標種となる水田雑草群落2タイプは,その群落に特異的に出現する種を多く含み,局所的な種多様性が高かった。大会当日では,これら群落タイプの種多様性について,より上位の空間階層における種分布との相互関係を含めた考察を行う予定である。


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