| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-205 (Poster presentation)

長野市松代町の水路ネットワークにおける水生植物の分布と立地環境条件に関する研究

*藤原亮太(信大・農),渡辺太一(信大院・総合工),大窪久美子(信大・農),新谷大貴(八島ビジターセンター),大石善隆(信大・農),佐々木邦博(信大・農)

近年、水田や水路といった二次的な水辺環境に生育する水生植物の減少や絶滅が問題となっている。地域の水生植物を保全するためには、様々な水辺環境間のつながりを水路ネットワークとして捉え、立地環境や管理との関係を解明することが重要である。そこで本研究は、城下町として伝統的な水路網が維持されてきた長野市松代町を事例に、水路ネットワークにおける水生植物の分布と管理を含めた立地環境条件との関係性を明らかにすることを目的とした。

水生植物の分布調査は、松代町における4つの水辺環境(水路及び、池、河川、水田)を対象とし、水流分岐点と材質構造を基準とした区間を1プロットとして、出現種を記録した。また、立地環境条件として各プロットの水質、水深、流速、材質構造を測定記録した。管理状況については町内の農家や各区長の方々に聞き取り調査を行った。

総計299プロットで総種数は93種が記録され、絶滅危惧種は環境省RDB記載の8種、長野県RDBの11種が確認された。TWINSPAN解析で得られた11群落型(A~K)の立地環境条件を比較すると、群落Eで底質が砂礫である割合が高いことが絶滅危惧種のアゼナルコ等を含む湿性植物の生育を可能にしたと考えられた。群落Gでは側面が石垣である割合が高いことが、ミゾシダやトラノオシダなどシダ類をはじめとする湿潤環境を好む植物の生育に寄与したと考えられた。群落Hでは底質が砂礫である割合が高いことが、ヤナギモ等の希少な沈水植物の定着を可能にしたと考えられた。群落Jの水田では、中干しを実施しない農法が、湿田で多いとされるイトトリゲモ等の希少な水田雑草の生育に寄与したと推察された。


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