| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-208 (Poster presentation)

ニホンアカザトウムシの隠蔽的種分化に関する研究

*粂川義雅(高知大・院),伊藤桂(高知大・農),早川宗志((独)農環研),三浦収(高知大・総合研究セ),横山潤(山形大・理),荒川良(高知大・農),福田達哉(高知大・農)

ニホンアカザトウムシPseudobiantes japonicus Hirst, 1911は、千葉県以西の本州、四国、九州に広く分布し、体長3.5~4.0mmで、林床の朽木や石下、および低地からブナ帯まで広範囲の落葉落枝中に生息し、個体数も多いため採集が容易である。本種は腹部背甲の第2区に一対の小さな顆粒があるものの、西日本のものは小さなイボ状に過ぎないが、近畿以東のものでは明瞭なトゲ状である。この様な種内で見られる形態的多様性は、それぞれが異なる歴史を経てきた結果として形成された可能性がある。そこで、本研究では本種の種分化過程だけでなく形態の進化の方向性を明らかにすることにより本種の地理的および形態的多様化過程を明らかにすることを目的として分布域から広く採集し、分子系統解析および外部形態解析を行った。

分子系統解析の結果、ミトコンドリアDNAのCOI領域を用いた系統樹から本種は4つの単系統群が含まれる側系統群を形成することが明らかとなった。また、各クレード内の分枝様式から四国南東部、四国南西部、紀伊半島、九州南部に起源地を持つことが示唆された。さらに、ミトコンドリアDNAの系統樹と核DNAの系統樹の比較から両系統樹間における系統的不一致を認めることはできず、またPCR-RFLPにより、核DNAにヘテロ接合を検出することができなかったために、クレード間で雑種は形成されていないことが示された。外部形態解析の結果、本種は外部形態が各クレードごとに異なっており、これらの形質を分子系統樹上に配置した場合、外部形態を基にした系統分類学的区別が可能であり、本種における各クレードは種分化を起こしていると考えられる。


日本生態学会