| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-072 (Poster presentation)

ウミネコにおける一腹卵数とエネルギー消費量

粂佑奈,*新妻靖章(名城大学),水谷友一,永田瑞穂,白井正樹(名古屋大学)

鳥類がいくつの卵を生むべきかは,古典的な問題であり,これまで多くの研究がなされてきた。その中でも,親鳥の生存と繁殖投資量とのトレード・オフを通じて,適応度を最大化するために最適な数を産卵していると考えられている。しかし,生活史戦略の理論的な基盤となるトレード・オフの生理的なメカニズムについては,いまだ不明な点が多い。本研究では,親鳥のエネルギー消費量について二重標識水法を用いて測定し,異なるクラッチサイズを持つ親鳥の繁殖投資の手法を明らかにした。

野外調査は2012と13年の2年,八戸市の蕪島にあるウミネコの集団営巣地で実施した。異なるクラッチサイズを持つウミネコをくくり罠で捕獲し,二重標識水を投与明日後,放鳥し,3—5日後に再捕獲し,採血した。

2012年と2013年の餌環境は,繁殖地周辺の海水面温度から,2013年の方が悪いと考えられる.ウミネコのエネルギー消費量は,年とクラッチサイズの交互作用に有意な効果が認められた.また,エネルギー消費量測定期間中の体重増加は2012年と2013年とも3卵の親が2卵に比べ有意に大きかった.2012年ではエネルギー消費量は3卵の親鳥の方が2卵の親鳥に比べ小さかったが,測定期間の体重増加は大きかった。一方,2013年では、エネルギー消費量は3卵の親鳥の方が2卵の親鳥に比べ大きく,測定期間の体重増加も3卵の親鳥がより大きかったことになる.

餌環境の良い2012年では,3卵の親鳥は少ないエネルギー消費でより多くのエネルギーを獲得していたことになる.餌環境の悪かった2013年では,3卵の親鳥は大きなエネルギー消費で多くのエネルギーを獲得していたことになる.2卵の親鳥は,餌環境の変動に対して応答しなかったことになる.本研究の結果より,クラッチサイズが異なると環境変化に対する応答に違いがあることがウミネコで明らかとなった。


日本生態学会