| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-077 (Poster presentation)

オオイタサンショウウオ幼生の発育段階と天敵種による生存率の変化

*永野 昌博 ・ 飯塚 常浩 (大分大・教育・環境)

オオイタサンショウウオ(Hynobius dunni Tago, 1931)は,ごく緩やかな流れの小川や水田などの止水環境で繁殖する日本固有種である。本種幼生は産み落とされた水の中でアカムシや水生昆虫などの小動物を食べて成長する。近年の生息環境の変化により急激に生息数が減りつつあり,全分布地域において絶滅危惧種に指定されている。本種の産卵場所の規定要因としては水辺と森の距離,DOなどの環境要因が指摘されているが,他種との種間関係に着目した研究例はない。しかし,経験則から魚がいるところにはオオイタサンショウウオは生息(産卵)しないと言われており,本種は他種との何らかの関係によって,生息数や分布が規定されている可能性は高い。

本研究では,オオイタサンショウウオの幼生(10個体)と同所的にいる生物(1個体)を飼育実験下で共存させ(各5反復),各生物と本種幼生の捕食-被食関係,また,各生物の本種幼生への捕食圧を孵化直後幼生(体長10~13mm),上陸前幼生(体長40~45mm)それぞれで調べた。

結果,ヌマエビ,アメンボは両幼生ともに捕食-被食の関係はみられなかった。マツモムシ,コオイムシ,サワガニ,メダカ,キンギョ(フナの代用:5cm以下個体),アカハライモリは前者は捕食するが,後者を捕食することはほとんどなかった。タイコウチとアメリカザリガニは前者を捕食することはあまりみられなかったが,後者の捕食には積極的であった。クロスジギンヤンマのヤゴ,ドンコは両幼生とも高い捕食圧を示し,実験終了時には全個体を捕食した。これらのことから,オオイタサンショウウオの生息を規定する要因を種間関係に着目して考察し,ビオトープの創造など保全生態学的アプローチにおける提案を行う。


日本生態学会