| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-098 (Poster presentation)

幸島のニホンザルにおける個体群存続可能性解析―給餌制限による環境収容力の縮小の影響―

*高橋明子, 鈴村崇文, 冠地富士男,山口直嗣,杉浦秀樹,伊谷原一(京大WRC),

宮崎県串間市沖に位置する幸島にはニホンザルMacaca fuscataが生息している。この個体群では長年研究目的での給餌が行われており、他の調査地では得られない正確な個体数や体重などの個体情報などを得ることができる。その一方で、過去の過度な給餌により個体数が増加し、九州本土などに比べ、非常に高い密度となっている。そのため給餌量の制限により、幸島の個体数密度を適正なレベルに保つ必要がある。そこで本研究では、環境収容力(K)を始めとした給餌量が影響しうるパラメーターを用い、個体群存続可能性の評価を行った。1977年から2011年までのデータから得られた、繁殖開始年齢、最高の繁殖齢、齢別死亡率、出生率、出生時性比などの値より、VORTEX9.99を用いて100年後の個体群存続可能性のシミュレーションを行った。その際、初期値として、環境収容力は過去の記録での最高値である122個体、齢分布は2011年年末時点での実際の分布を採用した。基準モデルとして、環境収容力の低下がなく、初期値のままのモデルを作成した。環境収容力の低下レベルおよび低下の期間、初期死亡率、繁殖齢以降の死亡率の異なるモデルと基準モデルを比較し、個体群の絶滅確率(PE)、個体群存続時の個体群サイズ(Next)の比較を行った。基準モデルでは、PE=0.39, Next=73.9±39.6(SD)であった。K=60まではPEが漸増していたのに対し、K=40になるとPEは急激に増加した。また、Kを減らす期間が短すぎると(e.g. 5年以下)、同じKであってもPEが増加した。今回の結果より、給餌量を制限する際は、急激な給餌制限を避け、個体数を慎重にモニタリングしながら時間をかけて個体数密度を下げていく必要性が示唆された。


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