| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-108 (Poster presentation)

生態系エンジニアの地域変異による環境改変効果の差異

*岡野淳一・奥田昇(京大生態研セ)

周囲の環境改変を通じて,同所生物の群集構造や進化に間接的な影響をおよぼす生物を「生態系エンジニア」と呼ぶ.動物の営巣行動は,エンジニアリングのひとつとして注目されている.これまでの検証例では,営巣行動は種で均一で,環境に対して不変であるとの前提がおかれていたが,変異や可塑性によって環境や他種への影響の仕方も異なっているかもしれない.

そこで川床の礫間隙に網を張って巣をつくるヒゲナガカワトビケラの営巣に,地域的な変異があるかを検証した.北海道から西日本まで,地質の異なる河川に生息するヒゲナガカワトビケラの営巣行動と,礫特性との関係を調べた.

その結果,営巣の場所選択と営巣プロセスが地域的に異なっており,礫の粒径分布がその変異を引き起こしている可能性が示された.本種を含む造網性トビケラは,網を張り川床環境を改変することで,底生の動物群集に影響を与えることが知られている.よってエンジニアとしての影響の仕方においても地域的に違うことが期待される結果となった.本発表では営巣様式の違いが、環境・群集に対しどのように影響するかについて,その可能性を議論する.


日本生態学会