| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-122 (Poster presentation)

大和川におけるシジミ類の遺伝的特性~水質改善後の回復状況

*上村了美(大阪市大工学研究科), 西尾直人(大阪市大工学部), 矢持進(大阪市大工学研究科)

大和川は奈良県と大阪府を流れる一級河川であり、江戸時代から今日に至るまで流路の変更、堤防造成などが継続的に行われてきた。高度経済成長期以降は最も水質の悪い河川とされたが、2003年以降は水質が著しく改善している。生物相も回復し、河川の代表的なベントスであるシジミ類では、本流の河口で汽水性のヤマトシジミの生息が確認され、淡水性のマシジミは支流でのみ確認された(石橋・古丸、2003)。しかしながら、その後は分布に関する調査は行われていない。また、この2種の他に淡水性のタイワンシジミの生息する可能性も考えられるが、マシジミとタイワンシジミは形態による識別が困難であり、分類学上の問題も指摘されている(山田ら、2010)。これらをふまえて本研究では、大和川の本流における水質改善後の分布の変遷を明らかにすること、およびこれらの遺伝的特徴を明らかにすることを目的として、シジミ類の分布を調査し、過去の調査結果と比較した。

大和川の河口から約15km の下流域において2013年5,7,9月に個体を採集し、キアゲンキットを用いてDNAを抽出、Cytb領域のPCRを行った。既報の遺伝子配列を入れて作成した系統樹とBLASTの結果をもとに種判別を行った。分類学上の問題を考慮し、系統樹において北上川産などと同じクレードの個体を”マシジミ型”、台湾産と同じクレードの個体を”タイワン型”とした。

本研究から、1)大和川には、ヤマトシジミ、マシジミ型、タイワン型のいずれもが生息しており、2)ヤマトシジミとタイワン型が同所的に生息していること、3)タイワン型の個体が採集個体の半数以上を占め、ハプロタイプ数が他より多いことなどが明らかとなった。


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