| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-150 (Poster presentation)

大津波前後の干潟巻貝の生息密度と遺伝的多様性の変遷

*三浦収(高知大・総合),牧野渡(東北大・生命),占部城太郎(東北大・生命)

2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う大津波により海岸の生物は大きなダメージを受けたことが考えられる。しかしながら、震災から3年以上経った現在においても海岸の生物が受けた影響の定量的な調査報告はあまりなされていない。そこで私たちは、津波前から蓄積してきたデータを活かして大津波が海岸に生息する巻貝ホソウミニナに与えたダメージの定量的な調査を試みた。

津波前後の生息密度を比較したところ、震災から1年後には巻貝の生息密度が大きく減少し、多くの調査地点で壊滅的な被害が確認された。しかし、震災から2年後には一部の調査地点で生息密度に回復傾向が観察された。このような生息個体数の大規模な減少は遺伝的な多様性にも大きな影響を与えることが考えられる。その影響を検出するために、多型性の高いマイクロサテライトマーカーを用いて震災前後の遺伝的多様性の比較を行った。マイクロサテライトの多型データを津波前・津波後に分け、遺伝的多様性を算出したところ、予想に反して、津波前後のホソウミニナ集団に遺伝的多様性の大きな変化は見られないことが分かった。

現時点では震災が生じてからまだ約3年しか経っていないため、ホソウミニナの密度及び遺伝的多様性はこれからも刻々と変化していくことが考えられる。今後も継続した調査を行うことで、津波被害からの回復過程をモニタリングしていきたい。


日本生態学会