| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-003 (Poster presentation)

淡水湖沼の硫黄酸化細菌群集における主要構成種の推定

*渡邉友浩, 小島久弥, 福井学(北大・低温研)

系統的に多様な硫黄酸化細菌(SOB)は硫黄、窒素、および炭素の循環を担う微生物として地球上に普遍的に生息する。海洋環境にはSOBが豊富に生息しており、全球規模での元素循環に大きく貢献すると考えられている。近年、沿岸堆積物や外洋の嫌気水塊において優占種が特定され、その生態が詳細に研究されている。一方で、陸域の元素循環に寄与する淡水湖沼のSOBについては、海洋と比べて存在量が少ないことから研究が容易ではなく、現場に生息する系統すら不明である。本研究の目的は、淡水湖沼のSOB群集における主要構成種を特定することである。淡水湖沼において想定されるSOBの主な生息域は、堆積物表層と部分循環湖でみられる嫌気水層である。本研究では、地理的位置の異なる5つの淡水湖沼(琵琶湖、オコタンペ湖、スカーレン大池、親子池、丸湾大池)の堆積物表層と、部分循環湖の塩川ダム湖(山梨県)の嫌気水層から採取された試料を解析対象とした。それぞれの試料から抽出されたDNAを用いて、4種類の硫黄酸化関連遺伝子を標的としたクローニング解析を行った。この結果、全ての湖沼から計543のSOB由来の遺伝子配列が得られた。系統解析の結果、343の配列がベータプロテオバクテリア綱に分類された。また、堆積物表層と嫌気水層から高頻度で検出された配列グループの1つは、それぞれベータプロテオバクテリア綱のSOBであるSulfuritalea hydrogenivoransSulfuricella denitrificansに極めて近縁であった。さらに、16S rRNA遺伝子に基づいた解析を同じ試料に対して実施した結果、上記2菌種が優占することが示唆された。本研究結果は、淡水湖沼環境で主要なSOBがS. hydrogenivoransS. denitrificansを含むベータプロテオバクテリアであることを示唆する。


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