| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-006 (Poster presentation)

ヤクスギ針広混交林における着生植物群落の成立要因

*南野拓也,東若菜,石井弘明 (神戸大・院・農)

ヤクスギの樹上で着生植物群落が発達する要因を明らかにするために、屋久島の針広混交林において、樹齢約200年のスギ(高齢木)と樹齢1000年を超えるスギ(老齢木)各4個体にロープをかけて登り、着生木本植物を調査した。老齢木に着生する木本種数および個体数は、高齢木の1.8~6倍および5~98倍であった。また、老齢木どうしでも着生個体数が45~391個体と大きく差があることがわかった。高齢木に着生していた樹種はサクラツツジが最も多くハイノキ、ヤマグルマ、シキミの4種で約9割を占めていた。一方、老齢木では上記の4種は合計して15%と低く、最も多い樹種はアクシバモドキであり、ナナカマド、ヒカゲツツジ、ヤクシマシャクナゲを加えた4種で約8割を占めていたことから、老齢木は高齢木とは種構成が大きく異なることがわかった。また、屋久島固有種であるアクシバモドキとヤクシマシャクナゲは老齢木にしか存在しなかった。高齢木では着生木本植物が4m以下の主幹に多く存在するのに対して、老齢木ではこれに加え、高さ12m以上に多く着生しており、樹冠部の木本植物群落が発達していた。

屋久島は台風の被害が多く、幹折れが発生する。幹折れ箇所からは複数の萌芽枝が再生するため、リターを堆積する基質が発達し、有機物層を形成する。幹折れからの年数が長い老齢木ほど着生木本植物の個体数が多かった。特に幹折れから200年を越える老齢木は有機物量が多く、着生個体数が著しく多かった。以上のことから、樹上で着生植物群落が発達する一次的な要因は樹形の複雑化であり、このような老齢木を保護することで、森林生態系の多様性保全に繋がると考えられる。


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