| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-023 (Poster presentation)

淡路島における放棄ジュルタ(湿田)の植生と保全上の課題

*藤原雄介,澤田佳宏,山本聡,大藪崇司,藤原道郎(兵庫県立大学大学院・緑環境景観マネジメント研究科)

湿田は水生・湿生植物にとって重要なハビタットであるが,圃場整備による乾田化や耕作放棄後の藪化・乾燥化により減少している.圃場整備や耕作放棄には水田所有者の意向や事情が反映されていると考えられるため,湿田植生の保全を検討するには,湿田植生の現状のほかに所有者の意向を踏まえる必要がある.そこで本研究では,淡路島北部中山間地域の6つの大字において,湿田の分布,植生,人との関わりについて調査をおこなった.

湿田分布調査では,2013年3-4月(非灌漑期)に現地を探索し,現存する湿田(放棄湿田を含む)を把握した.また調査地域のうち2つの大字で住民8名に聞き取りを行い,1970年代の湿田分布を把握した. 植生調査では,2013年8-10月に放棄湿田82枚,現行湿田2枚,放棄乾田19枚,現行乾田4枚,計107枚の水田に1m×1mのコドラートを510個設置し,植生と水深を調べた.また,各水田の水質,光環境,植物相を調べた.人との関わりでは,島民67人に聞き取りを実施し,かつての湿田での農作業などを尋ねた.また,湿田所有者9人に,湿田を今後どう扱いたいかを尋ねた.

分布調査の結果,調査地域で82枚の湿田を確認した.これらは2枚を除き全て放棄されていた.また,湿田は埋め立てなどによりここ40年で70-90%が消失していた.植生調査の結果,放棄湿田には水深,光環境,放棄後年数の違いに応じて多様な植物群落が成立し,また,湿生の絶滅危惧種12種が生育していた.聞きとり調査の結果,多くの農家は湿田を不要と考えていたが,一部には農地として維持したいという意見もあった.

今回の調査結果をもとに,湿田の特性を活かした省力型の農業により農地保全を行い,結果的に生物多様性も保全される方法を提案した.


日本生態学会