| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-037 (Poster presentation)

極乾燥域に自生するマングローブ樹(Avicennia marina(Forsk.) Vierh.)の安定同位体比を用いた葉のガス交換特性の解明

*笠間融(三重大院・生物資源), 松尾奈緒子(三重大院・生物資源), 中島敦(和歌山大・システム工), 吉川賢(岡山大院・環境), 縄田浩志 (秋田大・国際資源)

紅海沿岸域の極乾燥域に生育するマングローブ樹(Avicennia marina (Forsk.) Vierh.)は地際近くからいくつかの枝を水平方向に伸ばし、樹高の低い形態をしている。また、同一林分内で個体サイズが異なることも知られる。この地域は降水量が少なく河川からの淡水供給量も少ないため、海水の塩分濃度の高い地域である。したがって本研究では、こうした土壌水分・塩分環境が樹形や葉のガス交換特性と関係があるとの仮説を立てた。この仮説を検証するため、紅海沿岸北部のエジプト・ハマタ地区(以下HM)、紅海沿岸中部のスーダン・キラナイーブ地区(以下KL)およびドンゴナーブ地区(以下DG)の3林分に内陸側から海側にかけてトランセクト調査区を設置し、枝の形状とその枝の先端の葉のガス交換速度や炭素安定同位体比(d13C)の関係を調べた。さらに吸水源推定のため茎の中の水の酸素安定同位体比(d18O)を測定した。その結果、潮位の年変動の大きいHMでは土壌の長期的な塩・乾燥ストレスが要因となって個体が矮小化している可能性が示唆されたが、潮位の年変動の小さいKLでは制限要因ではなかった。そこで、同じく潮位の年変動の小さいDGにおいて茎内水の (d18O)を調べた結果、茎内水の(d18O)は海水が強風により流れ込んできたと考えられる地表面の水の(d18O)に近い値を示した。またこれらの個体では、午前中の飽差が小さい時間帯には高い気孔コンダクタンスを示した。これらのことから、乾燥地におけるマングローブ樹は、土壌水塩分濃度には制限を受けず、干上がりによる土壌の乾燥ストレスが制限要因となっていると考えられる。


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