| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-063 (Poster presentation)

雌雄異株植物ハナイカダHelwingia japonicaの生活史戦略

*戸塚聡子(新潟大院・自然研), 崎尾均,本間航介(新潟大・農)

ハナイカダは落葉広葉樹林の林内によくみられる雌雄異株性の落葉低木で、強い萌芽性を持つこと、葉上花をつけることなど興味深い特徴を持つ。本研究では、ハナイカダの生活史戦略を総合的に明らかにするために、1)ポリネーターは何か、2)雌雄の繁殖コストに差があるか、3)その栄養生長器官への影響、4) 地下匍匐枝の具体的な形態や役割、5)光環境と分布との関連性を調査した。調査は佐渡島小佐渡東部の広葉樹二次林に、林冠開空率が30%の明プロット、10%の暗プロット、数%から35%にまたがる林縁プロットを設置し行った。袋かけ実験の結果、ポリネーターは、体長3mm以上の双翅目、膜翅目、甲虫目、鱗翅目などの昆虫に絞り込まれた。これらの昆虫の多くは葉に乗り訪花していたため、葉上花が受粉効率を上げる手段となっている可能性が示唆された。葉1枚あたりの繁殖器官への投資は、♀が♂より数十倍高かった。この結果は、明・暗・林縁の異なる光環境における性表現と調和的で、♀の開花個体の比率は光環境に伴って明瞭に増加していた。しかし、繁殖コストの♂♀間の差は幹や根系などの栄養成長器官には反映されていなかった。光環境は幹の伸長成長速度、地下匍匐枝(埋土幹)の生長に影響を与えていた。ストレスが少なく、有性繁殖も維持できる林縁環境において地下匍匐枝を発達させ、時空間的変動の大きい林縁環境を平均化する生存戦略をとっているものと考えられる。


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