| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-106 (Poster presentation)

開放型チャンバーによる温暖化処理がコナラの成長と葉の形質に与える影響

*三島大(鳥取大・農),中村こずえ(鳥取大・農),佐野淳之(鳥取大・農)

本研究は、コナラ二次林の樹冠に温暖化を想定したオープントップキャノピーチャンバー(Open Top Canopy Chamber以下OTCCと記述)を3基設置し、温度上昇によるコナラ(Quercus serrata)の成長と葉の形質の変化を調べ、植食性昆虫に与える影響を明らかにすることを目的とする。OTCC内とOTCC外(以下controlと記述)の開葉度、シュート長と基部直径、葉のサイズ、食害度を測定した。また、葉を採取・乾燥させ、LMAと総フェノール量を算出した。

OTCCの温度上昇によって、controlよりもOTCCの方で開葉が早くなり、得られる同化産物が増加したと考えられる。またOTCCでは、controlよりシュート長と葉面積が増加したが基部直径は有意な差はみられなかった。また、1ヶ所を除き、二次伸長が毎年発生した。コナラは光に対する要求や適応性が高いため、より明るい空間を求めるために肥大成長より伸長成長を重視したと考えられる。葉の食害度は、OTCCとcontrolにおいて、温度上昇によってOTCCの開葉が早くなったことから、植食性昆虫の幼虫の出現時期とOTCCの伸長枝ごとの出現とにずれが生じたため、controlと食害度の値が異なったと考えられる。葉のLMAはcontrolで大きいという傾向があり、総フェノール量はOTCCで多かった。多くの植食性昆虫は柔らかくフェノール量の少ない葉を好み、フェノールは植食性昆虫の成長を妨げるとされている。そのため、温度上昇はコナラを利用する植食性昆虫の成長に影響を与えると考えられる。

これらのことから、温度上昇はコナラの開葉と伸長成長を促進させ、成長期間の長期化させるとともに、被食防御物質を増加させ植食性昆虫の成長を阻害し生物間相互作用に影響を与える可能性があると考えられる。


日本生態学会