| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-115 (Poster presentation)

種消失によるポリネーションネットワークの構造変化

*寺本健太郎,矢原徹一(九大・生態研)

自然界では、多種多様な生物と、その生物間の相互作用によって複雑なネットワークが形成され、個々の種個体群の存続はこの生物間ネットワークに依存する。しかし、この生物間ネットワークの持続に影響を及ぼす生物の特徴はよくわかっていない。そこで本研究では、ポリネーションネットワークを対象に、その持続性に大きく寄与する生物の特徴を調べた。調査は、九州大学伊都キャンパス内の生物多様性保全ゾーンにおいて、2011年3月9日から8月31日まで行った。ポリネーションの観察にはデジタルカメラによるインターバル撮影を、昼夜を問わず10分間隔で行った。35種の樹木類を観察し、129種類のポリネーターを確認した。このポリネーションネットワークに対し、樹木類を1種ずつランダムに消失させるシミュレーションを行い、各樹木類のネットワーク持続性への寄与の大きさ(重要度)を求めた。また、モジュール性の観点から、2つの定量的指標(モジュール内依存性;z、モジュール間連結性;c)を用い、ネットワーク構成生物種を4つの役割カテゴリー(ペリフェラル・コネクター・モジュールハブ・ネットワークハブ)に分けた。樹木類の重要度と役割指標(z,c)の間には有意な正の相関がみられた。zはハブの指標なので、ネットワーク持続性にはハブが重要であるといえる。また、ハブとなる植物の特徴(被訪花ポリネーター種数、チョウ・ガ・ハエ・ハチ・甲虫それぞれによる被訪花割合、アバンダンス、開花期間)を調べた。すると、zに対し被訪花ポリネーター種数とガの訪花割合が有意に影響していた。つまり、ハブとなる植物は多様なポリネーターに訪花されるが、その中でもガを比較的多く誘引する。すなわち、昼夜を問わず多くのポリネーター種を誘引する植物がポリネーションネットワークの持続性に重要である。


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