| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-132 (Poster presentation)

40年以上経過した雑木林における萌芽更新の事例

*松本薫(明大・農),倉本宣(明大・農)

雑木林は薪炭林として利用されてきた。しかし、燃料革命以降、役割を失い放置されるようになった。放置された雑木林を管理する方法のひとつに、萌芽更新を利用した管理手法がある。萌芽更新による管理は、林床の多様性の確保、ナラ枯れ対策などの効果がある。本研究では40年以上放置された雑木林において皆伐更新を行い、高齢化した雑木林における萌芽の規定要因の検討、萌芽更新の可能性の検討を行う。

調査は神奈川県川崎市麻生区黒川のコナラ、クヌギを中心とする雑木林にて行った。2012年3月に約1500㎡の伐採が行われ、約1年半経過した2013年11月時点で、コナラ31株の萌芽の有無、萌芽枝本数について、胸高直径、周囲長、伐採高、隣の林分との距離の関係を調べた。

萌芽の有無に関しては、GLMによる解析の結果、隣の林分との距離のみが最適な変数として選択された。影響の正負に関しては、胸高直径、伐採高、隣の林分との距離が正の影響、周囲長が負の影響を示した。また、萌芽枝本数に関しては、同様の解析を行い、伐採高、周囲長、隣の林分との距離が最適な変数として選択された。影響の正負に関しては萌芽の有無における結果と同様であった。

今回の調査地の40年以上経過した雑木林におけるコナラに関しては、隣の林分との距離が遠い切株ほど萌芽し、萌芽枝の本数が多い結果となった。距離が遠いほど光環境は良好といえるため、良好な光環境が萌芽を促進すると考えられる。また、伐採高、周囲長といった切株の形状に関しては、萌芽の規定要因とは判断できず、萌芽を制限する要因として、切株の高齢化の影響が大きいことが示唆された。さらに、伐採した59本の萌芽率は59%、コナラ31本の萌芽率は32%となった。以上から40年以上放置された雑木林において、萌芽更新による以前の林の復元は難しく、苗木や実生による補植が必要であると推測できる。


日本生態学会