| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-139 (Poster presentation)

ミズナラ実生の表層土壌攪乱地における空間分布と定着条件

*朝田一平,吉田俊也,北大・環境科学

北海道ではササが優占する無立木地を成林化するために、重機を用いた掻き起こし施業が広く行われてきた。しかし、その施工地では多くの場合カンバ類が圧倒的に優占することから、施業の応用範囲を広げるために、その他の樹種の育成方法を確立することが望まれている。本研究では、林業的に有用で、この生態系のキーストン種でもあるミズナラを対象とし、堅果の散布・発芽および実生・稚樹の成育状況を把握するとともに、それらに影響する諸要因を明らかにすることを目的とした。その際、既存の研究結果を考慮し、成木の樹冠からの距離との関係にとくに注目した。北海道大学雨龍研究林内の、複数の林齢の掻き起こし地(1-13年生)に調査地を設置した。また、ポットによる播種実験により、光及び土壌環境の影響をより詳細に特定した。当年生施工地において、堅果の散布量は距離に従って減少し、有効な二次散布も認められなかった。堅果の発芽率は成木に近い箇所で高い傾向があった。これは、ポット実験の結果、土壌の殺菌処理の影響は認められず、主として光強度の影響と考えられた。2-4年生の施工地では、実生の成長・生残率に距離による明瞭な差は見られなかった。一方、13年生の施工地では、過去5年間の生残率が樹冠から離れた箇所で高い傾向があり、これは周囲の樹木の促進効果が寄与したと考えられた。以上のように、定着に関与する環境要因としては光条件が最も影響力が強く、更新に有利な箇所は堅果・実生・稚樹の各ステージで変化することが明らかになった。成木から遠い箇所は発芽に適した光環境ではないが、その後は比較的高い生存率が見込まれることから、樹冠外の離れた位置を中心に人工播種を行なうことが、掻き起し地においてミズナラを更新させるために効率的であると考えられた。


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