| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-154 (Poster presentation)

外来カワマスの減少!? 在来アメマスを含めた10年前との分布比較

*福井翔,片平浩孝(北大・環境科学院),Shannan May-McNally(UBC),北野聡(長野環保研),小泉逸郎(北大・創成)

外来種は、生物多様性を低下させるため世界中で問題になっている。外来種による捕食や種間競争を通した影響は、在来種を減少させる主要因であるが、種間交雑も在来種に大きな影響を与えうる。交雑は遺伝子汚染や繁殖効率の低下を引き起こし、在来種を絶滅させる危険性がある。こうした影響は、世代を介して引き継がれるため、その評価には長期的なモニタリングが求められる。

カナダ東部を主な原産地とするカワマスは、日本や北米で在来イワナ属との交雑が問題視されている。北米では、外来カワマス♂が在来ブルトラウト♀と交雑する組み合わせが多いため(一方向性の交雑)、より多くの在来種の卵が無駄となり、在来ブルトラウトから外来カワマスへの置き換わりが起きている。北海道空知川上流域においても、2003年の調査から、外来カワマス♂が頻繁に在来アメマス♀と交雑していることが示唆された。そこで我々は、一方向性の交雑により、アメマスでも10年でカワマスへの置き換わりが起きていると予測し、追跡調査を実施した。

10年前と同じ22地点で捕獲調査を行った結果、予測に反して、在来アメマスの置き換わりは認められず、むしろ外来カワマスの分布地点数が減っていた。たとえ一方向性の交雑が生じても、種間競争や増殖率においてアメマスが優勢なのかもしれない。ただし、カワマスがいなくなった幾つかの地点では、交雑個体が確認された。したがって、純粋なカワマスは消滅しても、交雑を通して遺伝子は残している可能性がある。今後、在来種個体群の保全のためにも、カワマスは完全に絶滅するのか、カワマスの遺伝子はいつまで残るのか、継続的なモニタリングが必要である。


日本生態学会