| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-007 (Poster presentation)

モンゴル草原における放牧圧に沿った植生の非線形な変化からの回復可能性:長期モニタリングによる検証

*柿沼薫(東大・院・農), 佐々木雄大(東大・新領域), 小山明日香, 久保大輔(東大・院・農), ジャムスランウンダルマー(モンゴル農大), 大黒俊哉, 武内和彦(東大・院・農)

乾燥地の放牧草原において、過度な土地利用による土地荒廃からの回復を促すことは重要な課題である。モンゴル草原では、放牧傾度に沿って植物種構成が家畜嗜好性の高い多年生イネ科草本から一年生/不嗜好性多年生双子葉草本の優占へ、非線形に変化することが報告されている。このような草地において、変化を引き起こした要因である放牧圧を除去し、その効果を検証することは回復のメカニズムを解明する上で重要である。そこで本研究では、放牧傾度に沿って放牧圧を排除するための禁牧柵を設置し、柵内外の9年間の植生モニタリング調査および土壌分析を実施することで、非線形に変化した草地の回復可能性を検証した。

対象地はモンゴルのマンダルゴビ(MG)およびブルガン(BG)とした。放牧傾度に沿って柵を設置した調査区と、放牧圧の影響が小さい対照区を設定した。

対象区と調査区の植物種構成の非類似度を目的変数とし、放牧傾度、夏期の降水量、柵の有無を説明変数とした一般化線形モデルを実施しAICによるモデル選択を実施した。その結果、放牧傾度が入ったモデルが選択され、柵の有無が入ったモデルが選択されなかったことから、放牧圧排除が植生の回復へ与える影響は小さいことが示された。また、MGでは土壌中のP2O5, K2Oが、BGはC, N, K2O,が放牧傾度に沿って高くなる傾向を示したものの、柵によってこれらの成分の土壌中含有量は低下しなかった。

以上のことから、放牧傾度に沿った非線形な植物種構成の変化は、禁牧をしても9年間では回復しないことが示された。今後回復を促すためには、まず土壌状態の修復が必要となる可能性が示された。


日本生態学会