| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-039 (Poster presentation)

植物群集の生態系機能/サービスの変化を地図化する

*小黒 芳生, 饗庭 正寛, 黒川 紘子(東北大・生命), 小野田 雄介(京大・農), 中静 透(東北大・生命), 正木 隆(森林総研)

人間の生活は生態系の機能やサービスに依存しているが、生態系の機能やサービスは劣化しつつある。生態系サービスの劣化をもたらす大きな要因の一つは土地利用の変化である。それでは、日本では土地利用はどのように変化し、それによって生態系サービスはどのように変化してきたのだろうか?

これを明らかにするため、環境省の自然環境保全基礎調査(第3回・第5回)で作成された植生図を用い、植生区分ごとに4つの生態系サービス(1:樹木の光合成ポテンシャル、2:樹木利用法の数、3:蜜源植物の種数、4:花粉源植物の種数)の値を推定し、日本全体での生態系サービスの変化を推定した。

第3回調査から第5回調査までの約13年間で見られた土地利用の変化では、二次林から市街地・植林地・伐採跡地への変化、植林地から市街地・伐採跡地への変化、耕作地から市街地への変化が多くの面積を占めていた。この変化に伴い、推定した4つの生態系サービスは低下していた。光合成ポテンシャルの低下、樹木の利用法の数の低下は主に落葉広葉樹林から市街地・耕作地への変化によってもたらされていた。一方、蜜源・花粉源植物の種数は二次林から耕作地や伐採跡地への変化によって増加していたが、耕作地から二次林や植林地への変化、耕作地の市街地化による低下によって打ち消され、全体としては減少していた。

これらの結果から、近年の土地利用変化による生態系サービスの変化は主に森林の伐採・市街地化・耕作地化によってもたらされていること、同じ土地利用の変化が複数のサービスに異なる影響を与えていることが示唆された。


日本生態学会