| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-042 (Poster presentation)

砂礫性節足動物の分布に対するダムの影響

*松平将典,赤坂卓美,石山信雄,山中聡,中村太士(北大・農)

砂礫河原(以下、河原)は、出水攪乱による土砂の移動・堆積の結果、形成される河川特有の地形であり固有の動物群集を育む環境である。ダムによる自然流況の改変は、河原の質の変化を通して、河原に生息する動物群集に何らかの影響を与えている可能性があるものの、その影響はほとんど明らかになっていない。

そこで本研究では、ダムが砂礫性節足動物に与える影響を検証するために1)ダムの有無と河原の質、2)河原の質と砂礫性節足動物の個体数の関係をそれぞれ明らかにした。2013年7月、北海道十勝地方のダム河川と自然河川(各2河川)の各10か所の河原でオサムシ科甲虫とクモ類を採集した。河原の質として礫のはまり度と大きさを記録した。これらの環境要因のうち、ダムの影響を受けていたのは礫のはまり度のみであり、ダム河川で高い値を示した。これはダムによる流況の安定化によって、細粒土砂の河原への堆積が促進されたためだだと考えられる。次に、両分類群の個体数は礫の大きさと正の相関があった。大礫が節足動物の日中の隠れ家として機能していたためだと考えられる。礫のはまり度に関しては、両分類群で逆の傾向を示した。オサムシ科甲虫は下に凸の関係が認められた。これは砂礫地・砂地の両極端の環境を好む種群の増加と関係しているかもしれない。一方で、クモ類は上に凸の関係が認められた。これは羽化水生昆虫を礫の隙間に隠れて捕獲する、砂礫性クモ類特有の性質に起因すると考えられた。つまり、流況の安定化に伴い、餌となる水生昆虫が増加する一方で、採餌に好適な隠れ家が減少していくために、中程度のはまり度で個体数が高かったと考えられる。

これらの結果から、ダムは自然流況を改変し、砂礫性節足動物の生息環境を変化させることで、その個体数に影響を与えている可能性が示唆された。


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