| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-044 (Poster presentation)

外来木本種の駆除が土壌含水量に及ぼす影響は駆除からの経過時間によって変化する

*畑 憲治,可知直毅(首都大院・理工・生命)

森林生態系内で優占する外来木本種の駆除は、その生態系の水文学的なプロセスを変化させる可能性がある。この可能性を検証するために、小笠原諸島で優占する外来木本種であるトクサバモクマオウの駆除が、土壌含水量に及ぼす影響を、駆除からの経過時間の違いを考慮して評価した。小笠原諸島西島のトクサバモクマオウが優占する森林において、2010年、2011年、2012年にトクサバモクマオウを駆除した場所(駆除区)と隣接する場所(対照区)で表層土壌の体積含水率を比較した。また、リターの堆積量、林冠開空度、林床植生の最大植生高と被度を比較した。駆除区における土壌含水率は、対照区においてよりも有意に高かった。この駆除区と対照区との間の差は、駆除からの経過年数が長い場所で小さい傾向が見られた。駆除区のリターの堆積量は、対照区においてよりも小さく、この差は経過年数が長い場所で大きかった。林冠開空度は、駆除からの経過年数にかかわらず駆除区において有意に大きかった。駆除からの経過年数が長い場所では、駆除区における林床植生の最大植生高と被度は対照区においてよりも大きかった。以上の結果は、トクサバモクマオウの枯死は、土壌含水量を増加させることを示唆した。また、この増加は、樹冠通過雨量、リター通過雨量、蒸発散量の変化を介して、この森林生態系における水の収支の変化が関係している可能性がある、ということ示唆された。


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