| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-049 (Poster presentation)

アルゼンチンアリの根絶確認と地表徘徊性節足動物に対する影響評価

*坂本佳子1, 井上真紀2, 大西一志1, 鈴木一隆1, 上森大幹1, 野村拓志1, 岸本年郎3, 杉山隆史4, 杉丸勝郎4, 五箇公一1(1国環研, 2農工大院・農, 3自然研, 4フマキラー)

アルゼンチンアリLinepithema humileは、侵略性が高く、日本でも生態系被害が拡大していることから、環境省の特定外来生物に指定されている。これまで、世界各地で防除の取り組みが行われているものの、いずれも根絶には至っていない。そこで我々は、2010年に侵入が確認された東京都大田区内の2つのエリア(城南島、東海)において、2011年3月からフィプロニル0.005%を含有したベイト剤と液剤を用いた防除試験を実施している。城南島では、1年目に、ベイト剤の設置間隔により試験区を分割して、高薬量区(5 m間隔)、低薬量区(10 m間隔)、および無処理区を設定し、2年目以降は城南全域において高薬量で防除を実施した。その結果、高薬量・低薬量区における防除効率はいずれも99.75%で、低薬量でも高い効果があることが示された。アリ類の群集変化を主要反応曲線を用いて解析したところ、アルゼンチンアリの減少に伴い、オオハリアリ、サクラアリ、およびトビイロシワアリ等の在来アリが増加することが明らかになった。現在では、アルゼンチンアリの密度は極めて低い状態を維持している。一方、東海全域では、2013年以降からアルゼンチンアリが確認されなくなったため、世界初の根絶成功に至ったと考えられる。東海においては、アルゼンチンアリの減少に伴い一時増加したその他のアリ類が、継続的に投薬を行うことで減少する傾向が見られた。しかし、一部の地域で投薬を中止したところ、約1年後から在来アリの個体数が増加し、アリ類群集の回復が認められた。本講演では、標的種以外の地表徘徊性動物に対する生態影響を考慮した効果的な防除方法について考察する。


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