| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-054 (Poster presentation)

状態空間モデルによるアライグマの個体群動態の解明と景観を考慮した農作物被害モデルの構築

*栗山武夫,長田 穣(東大・農),浅田正彦(千葉県生物多様性セ),宮下 直(東大・農)

アライグマは森林から市街地まで幅広い環境に生息し,ジェネラリスト捕食者として動物から植物まで多様な餌資源を利用できるため,在来生物の捕食や農作物被害,人家や寺社への侵入,人獣共通感染症の媒介などのさまざまな問題を各地で起こしている.こうした被害を軽減させるためには,各地域の被害を許容できる生息密度を推定し,管理目標を設定することが重要である.さらに,景観構造が地域によって均一ではないため,生息密度と被害程度の関係が局所的に異なることが予想される.そこで本研究では,千葉県を対象に,農作物被害を被害の指標としてアライグマの被害許容密度を,周辺の景観構造から2㎞四方で空間明示的に予測することを目的に,まず,どの地域でも集計可能なメス個体の捕獲効率(CPUE)をもとに個体群動態を明示的に扱った状態空間モデルを用いて各市町村の個体数密度を推定した.モデルは、2008から2012年度の38市町村の捕獲効率をもとに構築し,市町村単位で生息密度と年成長率を推定した.生息密度は平均1.3個体/km2で,報告されている他地域と比較して低密度であった.年成長率はほとんどの地域で1.0以上であった.その後,推定された個体数密度と景観構造(森林面積・放棄水田面積・市街地面積・林縁長・河川長)を独立変数としたロジスティック回帰を行うことで被害程度との関係を明らかにした.結果,被害発生確率は生息密度に加え,森林面積と放棄水田面積が大きくなると高くなり,市街地面積が大きくなると低くなった.ベストモデルをもとに被害確率0.5のときの被害許容密度を千葉県全域で予測したところ,現在アライグマが低密度で生息する県北東部と南部地域では低いことが明らかになった.


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