| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-055 (Poster presentation)

群馬県大塩貯水池におけるカワヒバリガイの成長特性 -水深による殻長成長の変化-

*小林卓也,中野大助,坂口勇(電中研・環境科学)

群馬県富岡市の大塩貯水池は,2005年に特定外来生物カワヒバリガイ(Limnoperna fortunei)の生息が確認された貯水池であるが,渇水等により一時的に成貝が大量に死亡しても,速やかに生息量が回復する等,他の生息地よりも生産力が高い傾向が見られている。これまでに,同貯水池における幼生発生や付着特性について調査してきたが,今回,異なる水深における成長量や生残率の違いについて調査したので報告する。

2011年9月に,貯水池内から採取したカワヒバリガイを,目合い約5mmのナイロン製メッシュ袋に入れて,貯水池内の水深0.3m,5m,10m,15mおよび湖底面に配置した。実験開始時の供試個体の初期殻長は平均値18.4mm(±5.2)で,事前の調査により2008年~2010年に生産された個体が混在すると考えられた。その後,2013年12月まで,貯水池内に静置した後,殻長成長を調査した。

成長調査終了時における全水深の平均殻長は28.1mm,相対成長率(殻長成長量/初期殻長)の平均値は0.57であった。殻長成長量および相対成長率は0.3mおよび5mで大きく,水深が深くなると小さくなる傾向が認められた。また,実験終了時の生残率は,水深0.3m,5m,10mで85%以上であり,2008年に生産された個体の生残も確認された。一方,水深15mおよび湖底面の生残率は40%を下回った。水深15mでは,2013年度の夏季の渇水にともなう水位低下後に生残率が大きく低下したことが確認されており,着底にともなう湖底堆積物中への埋没により死亡個体が増加したものと推測された。さらにクロロフィル量等の環境調査,筋肉組織の安定同位体比分析結果から,これらの水深による成長量の違いには,植物プランクトンをはじめとする餌供給の違いが影響していることが示唆された。


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