| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-065 (Poster presentation)

霞ヶ浦における特定外来種ミズヒマワリの分布の現状と拡散リスク

*峯岸竜也(東邦大・理),中西諒(東邦大・理),矢野徳也,西廣淳(東邦大・理)

霞ヶ浦(西浦)に侵入したミズヒマワリの現状の実態と、分布拡大に関する生態的特性を検討した。西浦全周にわたり1km間隔で合計122地点の調査地点を設け、初夏(5-6月)と秋(9-10月)の2回、ミズヒマワリの分布と環境条件を調査した。その結果26%の調査地点でミズヒマワリの定着が認められた。定着に関係する要因を一般化線形モデルで分析したところ、より多くの分布拡大が確認された秋の調査結果においては、供給源と考えられる新利根川河口からの距離が近い場所および湖岸堤防と並行した石積みの離岸堤が設置されている場所で、有意に定着率が高いことが示された。

分散に関わる性質として、葉からの再生能力を検討したところ、小型の葉一枚からでも不定根や不定芽が誘導されることがわかった。不定根の発生には温度依存性があり、28度付近が最も高く、10度未満ではほぼ生じないことがわかった。またミズヒマワリの種子生産が認められ、交代温度条件(昼夜の日較差が大きい条件)では高い発芽率を示すことが確認された。

以上のことから、霞ヶ浦においてミズヒマワリはいまだ分布拡大過程にあること、治水のために設置が進められている石積み離岸堤はミズヒマワリの個体群成長を促進する可能性が高いことがわかった。また水温が低下する冬季に駆除することで、断片の流出による分布拡大のリスクを低減できること、種子による繁殖をするため農業用水網等を通じた広域分布拡大のリスクがあることが示された。


日本生態学会