| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-075 (Poster presentation)

四国における河川魚類の群集構造と種多様性:河川水辺の国勢調査から見た変遷と現状

*川西亮太(土木研), 梅本章弘(土木研, 復建調査設計), 傳田正利, 萱場祐一(土木研)

日本の河川は、高度経済成長期を経て河川改修や移入種の侵入など様々な人為的インパクトを受けてきた。そのため、生息する魚類群集は大きく様変わりしていると考えられている。しかし、その検証には継時的な群集データが必要なため、実態については不明な点が多い。1990年から全国109水系を対象に開始された河川水辺の国勢調査は数少ない長期大規模データであり、魚類については5年に1回の頻度で調査が行われている。本研究では、四国8水系の河川水辺の国勢調査の結果を基に、魚類群集および種多様性の変遷を明らかにすることを目的とした。総種数については、各水系の多くの調査地点で単調に増加する傾向が見られた。魚類群集の生物地理的構造を明らかにするため、各水系の最も古い群集データから移入種を除いてクラスター解析を行った結果、四国の魚類群集は「各水系の河口域」、「土器川と重信川」、「肱川」、「仁淀川と四万十川」、「吉野川と那賀川」、「物部川」に代表される6つのクラスターに大別された。一方、移入種を含めた解析では、吉野川下流域と肱川中流域が本来のクラスターとは異なるクラスターに分類され、これらの地点ではオオクチバスやゲンゴロウブナ、タイリクバラタナゴなどの移入により群集が類似化していることが明らかとなった。どのような生態的特性を持った種が減少傾向にあるかを明らかにするため、各魚種の過去から現在に至る分布地点の消失率を目的変数に、生態的特性を説明変数に回帰木分析を行った結果、寿命や産卵数が関与することが示唆された。以上より、四国の河川では移入種の侵入によって過去の魚類群集から構造が変化するとともに、特定の生態的特性を持った在来種が減少していると考えられる。


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