| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-121 (Poster presentation)

高緯度北極湿原における大気ー湿原間CO2フラックスの空間変動

*廣田充(筑波大・生命環境),飯村康夫(滋賀県立大・環境科学),岸本文紅・大浦典子(農環研),内田雅己(極地研),中坪孝之(広島大・院・生物圏)

北極を含む高緯度地域は,地球温暖化の影響が最も強く現れる生態系の一つである。この地域では,これまでの予想を上回るはやさでの氷河後退や生物季節の変化などが報告されており,様々な変化が懸念されている(AICA 2004)。このような中,北極のスバールバル諸島では,中坪らによって氷河後退域の植生,微生物,土壌炭素の分布やその制限要因,さらに生態系レベルでの炭素循環に関する研究が行われ,その現状を明らかにしてきた。一方で当該地域には湿原も分布しているが,湿原に関する知見は少ない。一般的に,湿原は有機炭素の蓄積量が極めて多いという特徴があることから,北極湿原のCO2吸収機能の把握は極めて重要である。そこで本研究では,高緯度地域の北極湿原におけるCO2吸収機能,特にその空間変動特性の把握を目的とした。

スバールバル諸島、ニーオルスン付近の湿原において2013年7月に調査を行った。湿原を横断するような約300mのラインを設置し,そのライン上に8つの調査地点を設けた。8つの調査地点間には比高差が約20mあった。各調査地点では,群集レベルでのCO2吸収量,活動層,地下水位,土壌温度,ORP,モスバイオマス等を測定した。湿原内の8つの調査地点は,活動層は約20cmとほぼ同じであったにも関わらず,常に冠水気味の部分と比較的乾燥した部分の二つに区分された。総光合成速度(GPP)と生態系呼吸速度(ER)ともに,冠水部分の地点で大きく(GPP:約-8,ER:約4 µmol CO2 m-2 s-1),乾燥気味の地点で小さい傾向があり後者はCO2の放出源になることもあった。


日本生態学会