| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-139 (Poster presentation)

冷温帯落葉広葉樹林における個葉・葉群窒素量のリモートセンシング

*野田響(国環研),村岡裕由(岐阜大・流域圏セ),奈佐原顕郎(筑波大・環境生命),伊藤昭彦(国環研)

窒素は炭素とともに陸域生態系の構造と機能を支配している。特に植物の葉の窒素は,葉の生理的特性と物理的構造を決定する。人工衛星による広域の植生の葉窒素量のモニタリングが可能になれば,陸域物質循環研究の発展に寄与するであろう。しかし現在のところ,信頼できる葉窒素リモートセンシング手法は確立されていない。葉の生理的・解剖学的特性は,個葉の分光特性(反射率,透過率,吸収率)を決定しているとされる。また,個葉の分光特性は,葉群構造との相互作用により群落の分光反射特性を決定する。従って上述の手法開発には,第一に葉の生理的・解剖学的特性と個葉の分光特性との関係から葉窒素量の指標として有効な波長/植生指数を見出し,次にその関係を放射伝達モデルにより群落レベルにスケールアップする手法が有効であろう。

本研究では,岐阜大学高山試験地の落葉広葉樹林において優占種のミズナラとダケカンバを対象に,個葉の生理生態学的特性と分光特性との関係解明に取り組んだ。林冠の葉について光合成特性,クロロフィル量,単位葉面積あたりのバイオマス,窒素含量を2003-2007,2009,2010年に季節を通じて測定した。クロロフィル量と光合成特性のデータを組み合わせて,光合成系に分配された窒素(機能的窒素)量を推定した。2004-2006,2010年には,積分球と分光計を用いて個葉の分光特性を測定した。その結果,全ての個葉の特性は,それぞれ明瞭な季節変化をした。中でも単位葉面積あたりの機能的窒素量は,RedEdge(700 nm付近)での反射率と季節変化パターンが一致し,葉窒素量を機能的窒素とその他の窒素に分離したリモートセンシングが有効である可能性が示された。


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