| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PC2-008 (Poster presentation)

冷温帯シバ草原における温暖化が土壌微生物及び窒素動態に与える影響

*鈴木真祐子(早稲田大・教育),吉竹晋平(岐阜大・流圏セ),墨野倉伸彦,田波健太,友常満利(早稲田大・院・先進理工),小泉博(早稲田大・教育)

有機態窒素の無機化や硝化といった土壌中の窒素動態は土壌微生物の活動に大きく左右され、これらの変化は生態系の物質循環にも大きな影響を与える。従って、近年の地球温暖化が土壌微生物活性および窒素動態に与える影響を明らかにすることは重要であるが、昇温によるこれらの変化を野外環境下で明らかにした例は少ない。そこで、本研究では冷温帯シバ草原を対象に野外温暖化操作実験を行い、土壌微生物活性及び窒素動態への影響を明らかにすることを目的とした。

温暖化には赤外線ヒーターを用い、温暖化区での地温を常に対照区よりも2℃上昇させる制御を行った。これらの実験区において、新たに開発した小型トレンチ法と密閉チャンバー法の組み合わせにより微生物呼吸を毎月1回測定した。さらに、区画の土壌を毎月採取しATP法により微生物バイオマスを測定した結果を踏まえて微生物活性の評価を行った。シバの生長期間(5月~11月)における窒素の無機化速度、硝化速度はレジンコア法を用いて測定した。

温暖化区における微生物呼吸速度は407(151—707)mgCO2・m-2・h-1であったのに対し、対照区では557(132—1058)mgCO2・m-2・h-1となり、温暖化区の微生物呼吸速度の値が対照区に比べて小さくなっていた。単位土壌あたりの微生物バイオマスや、単位バイオマスあたりの微生物呼吸速度についても温暖化区の値が対照区に比べ小さくなったため、温暖化による温度上昇は冷温帯シバ草原の微生物活性を抑制することが考えられた。また、レジンコア法により測定された窒素無機化速度及び硝化速度も対照区に比べて温暖化区で小さくなった。以上より、温度上昇は微生物活性を抑制し、窒素動態も大きく変化させることが示唆された。


日本生態学会